TraveLWithDog vol03
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│中村さんが製作したペットカート「マザーカート」によって、愛犬との旅行が随分と身近になったのではないですか? 大手企業が発売していたカートの3倍以上の価格にもかかわらず、マザーカートは、凄まじい勢いで愛犬家の方々に支持されました。それは、飼主さんの「少しでも愛犬たちに良いものを与えて 亡き母から託された1頭の愛犬のために、中村貴徳さんが製作した特注ペットカート。それは、のちに製品化され、現在のペットカートブームを生んだ。この成功は、〝愛犬との旅行が普通の未来〞を大きく手繰りよせたかに見えた。しかし、現実には、一歩進んだだけに過ぎなかった。あげたい」という親心からなるものだったと思います。しかし、ペットイベントに出展してみると、同じく愛犬に愛情を持っている人でも、興味を示さない人が多くいました。そこで私は「ペットカートに興味ないですか?」と尋ねてみると、「旅行に行くときは、犬を預けていくから興味ない」との返事が返ってきました。みんなが愛犬と一緒に旅行したいわけではなかったのです。それと同時に、あることに気付いたのです。ペットカートを求める飼主さんは、ほぼ全員が、愛犬と一緒に出掛けたいと願う人なんだと。しかしそこで、一つの疑問にぶつかりました。「カートを買ってくれた人たちは、愛犬と愉しい旅行に行けているのか?」と。│現実には、愛犬との旅行が満足できるものではないのだと知りました…。 私が愛犬との日本一周で体験したのは、素晴らしさだけでなく、窮屈さも沢山ありました。犬と一緒だと高級旅館には宿泊できず、ペンションやキャンプ場のみ。露天風呂が付いているような施設には当然宿泊は無理。レストランや観光施設に入るときも、車に愛犬を待たせることに。犬がいることで自分の行動の範囲は狭まり、同時に愛犬には寂しい思いをさせることになりました。それと同じ思いを、カートを買ってくれた人もしているのでは…。 ペットと泊まれる高級旅館を作り、ペットと入れる観光施設を増やしていく。カートを販売する責任として、その先の笑顔を提供できないのであれば、カートはただの「鉄の塊にすぎない」。そのことに私は気が付きました。│それで、ペット専門旅行会社「トラベル・ウィズ・ドッグ」を立ち上げたのですね。 1つずつですが、交渉を続け、ペットと入れる場所を増やしていきました。私は自分がやりたいことを思いつくと、いつも目をつぶって考えるようにしています。「愛犬と一緒に〇〇へ行けたら楽しいかな?」。楽しいと感じたら、次に「なぜ、行けないの?」と考え、そして「どうしたら行けるようになるのか?」と考え、行けない理由(壁)を1つずつ壊していく。犬と入れない場所があれば、「毛が飛ぶ↓洋服着せるよ」「うるさいから↓教育しているからほえない」「くさい↓ニオイかいでみて、シャンプーしたからくさくないよ」。ダメな理由を1つずつ壊して、一歩一歩前に進んでいきました。 壁を作っているのは飼主さんも同じです。「うちの子は、もう歳だから」と旅行を諦めてしまう。今は、医療の進歩も目覚ましく、うちの子のように19歳になっても一緒に旅ができるのです。歳を取った犬は、ペットホテルで預かってもらうこともできないし、預けたくもない。奇跡に近い確率で、我が家の家族となった愛犬たちと、共に人生を愉しめてこそ、本当に素晴らしい人生だったといえると私は考えています。そう、19歳の愛犬と、日本一周したやつがここに実際にいるのですから。│『世界中のどこにだって愛犬と旅ができる次代』そんな未来を皆さんと一緒に創っていきましょう!23Spring 2016愛犬のために製作した、特注ペットカート始まりは、亡き母から託された1頭の愛犬からでした。

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